当記事を書くに当たりどうしても欠かせないと思われる筆者の属性をお知らせしておきます。
- ソルトレイク五輪あたりからのフィギュアスケートオタク。いわゆるスケオタ。
- いにしえの腐女子(雑食系)。
また、念のため最初にお断りしておきますが、当記事はテレビアニメ「ユーリ!!! on ICE」(以下YOIと略称)を否定したり批判したりdisったりするものではありません。またスケオタの総意を述べるものでもありません(スケオタさんでもYOIにはまった方もたくさんいらっしゃると思います)。あくまでも上記の通り「どう考えてもYOIにはまる属性持ち」のはずなのに私がはまりきれなかったのは何故か、を自分自身疑問に思い、考察して掘り下げた結果を述べるだけのものです。
いきなり結論:スポ根だと思っていたら恋愛ものだった。
そうなんです。もうこれは完全に受け取り側の問題なのですが、フィギュアスケートをスポーツとして見ている私、勝手にスポ根ものを期待していたんですね。で、蓋を開けてみたらラブストーリーだったという。
恋愛を主軸にした物語というのがどうも苦手なので、はまれなかった主要因はまさにコレ。スケオタとか全く関係なし。途中までは楽しく見ていたのですが、恋愛感情を想起させる描写が増えてきた後半あたりからスッと引いてしまったんですよね……。
先にも書いたとおり腐女子歴長いのですが、昔から公式でくっつけてくるカップルには全く興味を持てないタイプでして……。公式がそうと言っていないものを曲解して遊ぶのを楽しむ傾向にあるので、そっちの方向でもいまひとつ食指が動かなかったのですよね。
作品としてダメだという訳ではないんですよ。例えば「
魔法少女まどか・マギカ(まどマギ)」なんて、萌えキャラ魔法少女ものだと思って見始めたら(ネタバレ回避のためぼかしますが)3話のマミさんあたりで視聴者をぶん殴ってきて、無理!ってなる方とむしろ面白い上等!ってなる方とに分かれますよね。でもまどマギという作品自体は素晴らしいじゃないですか。
YOIも同じで、作品としては挑戦的だし意欲的だし素晴らしい。スケオタとしてもフィギュアスケートという競技に興味を持ってくれるきっかけになってくれれば嬉しいとも思います。
しかしながら、いわゆる「はまる」ことはできなかったのです、私は。苦手なテーマだったばかりに。
……という結論だけだと何故わざわざこの記事を書いているのかの意義がないので、もう少しだけ、掘り下げていきます。
何故スポ根に「できなかった」のか。
実は最初にYOIの企画を知ったときに(スポーツものだと信じて疑っていなかったのですが)、その時から「これストーリーどうまとめる気なんだろう……?」という疑問がなかったわけではないのです。
その疑問要素は以下の2点。
スケオタだとこれだけでピンと来るのですが、そうでない方へは説明が必要でしょう。
日本でのフィギュアスケート放送のラインは主要局では「NHK」と「テレビ朝日」と「フジテレビ」の3系列です。
NHKはNHK杯、
テレビ朝日はNHK杯以外のグランプリシリーズ(GPS)、
フジテレビは全日本、四大陸、世界選手権の選手権系列、です。
つまり、YOIはテレビ朝日が放送するということは、主な舞台はGPSであり、クライマックスをグランプリファイナル(GPF)に持ってくるだろうことは容易に予想がつきました。放送が10月~12月の1クールのみで、GPSの期間(9月~12月)とほぼ一致することからもそれは明らかです(端的に言えば、YOIそのものがまるっとGPS放送の番宣ということです)。
GPFがクライマックスということは主人公はGPFに出場するだろう
↓
GPFに出場するにはGPS(全部で6大会あり、選手は最大で2大会に出場できる)で2大会ともに良い成績を取らなければならない
↓
スポ根の必須要素である「惨敗による挫折」をストーリーに織り込めない
という構成上の制約がどうしても出てくるよね、ということが最初から分かっていたのですよね。なので、「どうストーリーをまとめるのか?」という疑問に繋がる訳です。
※実際には主人公は前シーズンの全日本で惨敗して世界選手権にも選出されなかったという形で「挫折」が織り込まれたのですが、劇中描写を見る限りだと世界評価的には国内に主人公に比肩する選手はいないようなので、それほど崖っぷちと言えるような失敗とも思えません。
もし完全にスポ根として描くなら、例えばですが、
- 振り付けと構成の戦略をコーチらと立てる
- B級大会でそれなりに手応え
- GPSで1戦目好成績も2戦目でまさかの大不調、GPF進出を逃す
- ライバルのGPFでの活躍に悔しさを覚えながら猛練習
- 全日本で優勝は逃すも世界選手権の代表にはぎりぎり選ばれる
- 四大陸ではSP神演技トップ通過もFSでやらかして優勝を逃す
- 世界選手権はSPミスで出遅れもFS神演技で逆転優勝!来季の3枠ゲット!
……ぐらいのドラマが欲しいところですが、いかんせん1クールですし、GPS以外の放送権を持っていないテレ朝ではシーズンの本戦である後半戦、全日本選手権・四大陸選手権・世界選手権を扱うことができません(GPFをうっかり「世界一決定戦」などと銘打ってしまっている以上、本当の世界一決定戦である世界選手権を出すわけにもいかないでしょう……)。
そういう諸々の大人の事情もおそらく絡み、スポ根ものにはしきれなかったのではないかなと思います。想像ではありますが。
以上がこの記事の本題である、私がYOIにはまりきれなかった最大の理由とそれにまつわる事情の説明でした。以下はそれに比べればごくごく小さな要因ですが、スケオタだからこそ……の部分が多いので、参考までに。
繰り返しますがスケオタの総意ではありません。あくまでも私個人が気になってしまったことです。
「完璧な再現性」が見せてしまった「不自然さ」
スケートシーンの作画、素晴らしかったです。スケオタから見ても非の打ち所がない(ちゃんとフリップとルッツのエッジの描き分けまでされていて変な声出ました)。特にOPと第1話のヴィクトルのFS。あれはいいものです(反芻)。
振り付けは人気振付師の宮本賢二先生(ミヤケン)。ミヤケンの振り付け大好きなんですよね。もっと言えばミヤケンの師匠であるカメレンゴ先生の振り付けがもともと好きなので、多分同じ延長線上なんだと思うのですが。欧州系のちょっとネットリ感のある振り付け美味しいですmgmg。
脱線しました。
さて、作中プログラムの振り付けをミヤケンが行い、ほとんどのモーションをミヤケン自身の演技からとり、それを素晴らしい精度でアニメーションに仕上げた――ことが、悲しいかな、スケオタ目線で言うととてつもない違和感を生んでしまったのです。
みんな同じ選手にしか見えない!!!
実際の選手ってみんな滑りが違うんですよ。一蹴りの強さ、カーブ、ジャンプへのアプローチ、空中姿勢、着氷の癖、腕やフリーレッグの位置、エレメンツの得意不得意……。
それが、全部、全ての作中選手、ミヤケンにしか見えない。特にモーションの再現性の素晴らしいOP、第1話のヴィクトルFS、勇利のSP。見ながら「ああこれはミヤケンの動き……ミヤケンが見える……」とずっと呟いていました。ちなみにユーリのモーションは違う方が担当されているので、ちゃんと違う選手に見えました(ジャンプの癖とか違いますよね)。
勇利も設定上はステップが得意とあるのに、他の選手もミヤケンが華麗にステップを踏んでいるせいか、あまり際だってステップでの盛り上がりというのが見えなかったのですよね。惜しい。
贅沢を言うなら……せめて2~3人でプログラム作りを担当して、モーションもそれぞれ違う方からとってくれたら、とても見応えのあるものになったのではないかと思います。
いや分かってるんですよ贅沢だって。でもねスケオタとしてはですね、そういう選手ごとの個性の違いを愛しているところがあるので。そこが表現されなかったのがとても残念で、かつ、見ていてとてつもない違和感で、落ち着かないことこの上なかったです。
作中プログラムを使ってのアイスショーとかやるんだったら行きますよ。超行く。床を転げ回る勢いで楽しみすぎるので是非実現してください。
蛇足ですが再現性といえばスケオタ三姉妹の再現性はハンパなかったです(笑)。
はい、スケオタってあんな感じで生きています……。